滋賀ペット治療院の山路です。
主に往診でペットの鍼灸治療をしています。
とても面白い本を読みましたので、紹介します。
「手の治癒力」というタイトルで、著者は桜美林大学准教授・身体心理学者の山口創先生です。
この本では、古今東西のいろんな文献や研究を引用しながら、「手が生物の体を癒やすことにどれほど力を発揮するか」を解説しています。
それだけでなく、手とは素晴らしい感覚器であり、古来から触れることによって相手の体から様々なことを読み取って診断を行ってきました。
現代は検査機器の発達により、医者や看護士が患者を手で触れて相手の状態を把握するという術が失われつつありますが、患者の心身の状態を肌で知り、いたわることができる「手の力」を見直すべきと著しています。
東洋医学では、「切診」といって手で相手の体に触れて情報を得る診断が今でも主流です。
その方法も、脈診・腹診・ツボや経絡をなぞるなど、多岐にわたります。
経験を積んだ鍼灸師さんは、手で触れたときの皮膚の湿り具合や毛穴の開き、熱感や張りなどを瞬時に読み取り、その日の状態を把握して治療のための証を立てるそうです。
ひとつ、とても興味深い記述がありました。
それは、「肌に触れる速度で気持ちよさが変わる」というものです。
英国の心理学者の研究によると、人の体は「1秒に5cmの速度で撫でたときに一番気持ちよいと感じる」そうです。
さらに、「1秒に5cmの速度で触れるときに最も反応する神経繊維が発見され、『C触覚線維』と名付けられた。」と書かれています。
本文から引用しますと、
これにより、体は自ら元に戻ろうとする力を一定に保つ」
そうです。私がいつもローラー鍼の効果を説明するときに使っている表現です。
ゆっくりとした優しい刺激がペットの心身を整え、免疫力をアップし、体の治ろうとする力を高めるんですね。
もちろん、マッサージにも同様の効果があります。
この本によると、ゆっくりと腕や背中をマッサージすることで、触れられた人は忘れていた身体感覚を取り戻し、精神的にも安定するそうです。
現代医学ではつい軽視されがちな「手の癒やし効果」「手の診断力」。
東洋医学では当然のこととして活用されています。
ご自分のペットにも飼い主さんの手で癒やしを与えてあげましょう!
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